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子どもの「+」「-」どちらを見ているのか

 子どものいいところを見たい、伸ばしたい――そう頭ではわかっていても、つい何かにつけて“できていないこと”ばかりに焦点を当ててしまっていませんか?
今回は、物事の「陰」と「陽」、どちらに目を向けるかによって生まれる世界の見え方の違いを、「一極二元論」という視点からひもときます。

一極二元論の視点

■ 一極二元論とは

「一極二元論」とは、すべての物事は一つの源(極)から発し、その中に対となる2つの側面があるという考え方です。
たとえば「光と影」「善と悪」「表と裏」など、一見対立するものが、実は一つの全体性の中で成り立っているという思想です。
これは東洋の「陰陽論」に通じます。

この視点に立つと、「陰の面」も「陽の面」も、どちらも切り離せずに共にあるものとして捉えることができます。


■ 「陰」ばかりを見る人の心理的傾向と研究

1. ネガティビティ・バイアス

心理学では、人間はポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く反応し、記憶に残しやすいという傾向があります。

  • 研究:Baumeisterら(2001)の論文 “Bad is stronger than good” によれば、人はポジティブな出来事よりもネガティブな出来事に5倍以上敏感であるとされています。
  • 背景:進化心理学的に、危険(ネガティブ)を回避することが生存に直結したため、人間の脳は「悪い方」への注目を優先するようにできています。

このため、特に訓練を受けていない人は、つい「できていない部分」や「欠点」ばかりに目が向いてしまいます


2. 自己投影とシャドウの法則(ユング心理学)

  • ユング心理学では、人が他者の“陰”ばかりを見て責めたくなるのは、自分の中に抑圧された「シャドウ(影)」の投影であるとされます。
  • 自分の中にある否定的な側面(未熟さ、欠点、劣等感など)を他者に見出して攻撃することで、自我を守っているのです。

つまり、子どもの“短所”ばかりに目が行く人は、実は自分の中にある「受け入れがたい部分」を投影して見ている可能性があります。


3. 認知の歪み(Cognitive Distortion)と自己肯定感の低さ

  • 常に“欠点探し”をしてしまう人は、認知行動療法(CBT)で言う「全か無か思考(白黒思考)」に陥っていることがあります。
  • こうした人は、「完璧でなければ意味がない」「できないことはダメ」という考え方を無意識に持っており、自己肯定感が低い傾向があります。

■ 一極二元論の実践的応用

教育や対人支援の場では、「陰も陽もあって一つ」とする視点がとても重要です。

  • 子どもの短所を「長所の裏返し」として見直すことで、自己肯定感の向上や対話の成立が促進されます。
  • 支援者や保護者が「短所は成長途中の姿」と捉えることで、健全な関係性が育まれます。

🔻陰に焦点を当てた子どもへの声かけ事例

  1. 「なんでまた忘れたの?」
     できなかったことを責め、改善よりも叱責が前面に出てしまう言葉。
  2. 「もっとちゃんとやらないと生きていけないよ」
     将来への不安を強調し、子どもを脅して動かそうとする言葉。
  3. 「そんなことしてたら、大人になって困るよ」
     今の行動を否定し、「このままじゃダメ」と決めつけてしまう表現。
  4. 「メンタルもっと強くしてもらわないと」
     子どもの現在の感情や弱さを受け入れず、心の在り方を否定する声かけ。
  5. 「自分でやって!そんなことしないで!」
     一方的な突き放しに近く、子どもが助けを求めた時に拒絶される体験になりやすい。

こうした言葉は、どれも「不足」「未熟さ」「困る未来」に焦点を当てており、子どもの安心感や自己肯定感を損ないやすくなります。

🔆 陽に焦点を当てた言い換えバージョン

  1. 「なんでまた忘れたの?」
     ➡︎ 「覚えようとした気持ちは伝わってきたよ。次はどうしたら忘れずにできそうかな?」
     → 責めるのではなく、工夫や改善の機会として捉える言葉。
  2. 「もっとちゃんとやらないと生きていけないよ」
     ➡︎ 「少しずつ自分でできることが増えてきたね。この調子で、できることを少しずつ増やしていこう」
     → 現在の成長を認め、未来への希望をつなげる表現。
  3. 「そんなことしてたら、大人になって困るよ」
     ➡︎ 「今のうちにたくさん挑戦できるのはすごいことだよ。大人になっても、その経験はきっと力になるよ」
     → 現在の行動を肯定し、未来につながる価値として伝える。
  4. 「メンタルもっと強くしてもらわないと」
     ➡︎ 「つらい気持ちもちゃんと話せるのは大事な力だよ。一緒に気持ちの整え方を考えていこう」
     → 弱さも力のひとつとして受け止め、共に歩む姿勢を示す。
  5. 「自分でやって!そんなことしないで!」
     ➡︎ 「自分でやってみようとしているの、うれしいよ。どう手伝えばよさそうかな?」
     → 自立心を尊重しつつ、関係性を切らずに促す言葉。

これらの言葉は、「不足」ではなく「可能性」に焦点を当てた声かけです。
子どもが自分の状態を肯定的に捉える土台となり、成長意欲や信頼関係の形成にもつながります。


■ まとめ

項目内容
一極二元論陰と陽、善と悪など、対立に見える2つの側面が一つの極に内包されているという思想
ネガティビティ・バイアス人はネガティブな情報に強く反応しやすい。ポジティブよりも影に目が行く傾向がある
ユング心理学他人の陰に注目するのは、自分の中の「影」を投影している可能性がある
認知の歪み全か無かで判断する思考パターンにより、短所ばかりを強調する
実践長所・短所を一体として捉える姿勢が、教育・福祉・家庭において有効

陰があるからこそ、陽のあたたかさを知ることができます。
私たちは、どちらに目を向けるかをいつでも選ぶことができます。
今日から少しずつ、「光」を育てていく毎日を始めてみませんか。

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